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「目先に囚われない経営」が基本 ― 2011年07月29日 16時28分21秒
避難民も寄りつかない旅館」は、なぜよみがえったのか
震災に負けない人々(11)平田裕一・向瀧社長
内藤 耕 2011年7月26日(火)
日経ビジネスオンライン
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20110711/221413/
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この記事は、あまり参考にならないだろう。
なぜなら、この旅館の利用者数が一旦激減した原因は、旅館や周囲の観光資源そのものにあるのではなく、旅館と顧客を結ぶ「流通」のラインが地震により不安定になり「通常の『顧客の移動』」が確保できなかったからという「外的要因」が主なものだからだ。
そのため、外的要因が改善されれば、顧客・旅館周辺、双方に問題が無い以上、回復方向に向かうのは当然だ。
(とはいえ、震災による顧客サイドの状況変化や中間地点の東北地方全体で未だ不安定な部分があるため、完全に回復する事は現段階ではのぞめないだろうが。)
ただ、この記事で注目する点があるとすれば、それは目先の「顧客数(収入)」を確保するために、「流通」の変動という外的要因に対し「旅館のサービス」という本質そのものを変えて対応しなかった事だろう。
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確かに「避難民向けサービス」を提供すれば、当時の状況から考えると一旦は「顧客数」や「収入」を維持できるかもしれない。だが、そのためには「サービス内容」を変える必要がある。
その場合、中間の「流通」ラインが回復した後を考えれば、困ったことになっていただろう。
なぜなら、回復後に、この旅館では「今までの顧客」にも「今までと異なる新サービス」を提供することになるからだ。
この「新サービス」は、避難民向けに提供してしまった以上、避難民の利用が完全に無くなる提供する必要がある。提供途中でサービスを変更するという事は許されないものと考えるべきだ。
この場合、今までの顧客の嗜好と新サービスが合えば問題ないのだが、もし合わなかった場合、顧客はその旅館から離れていく事になる可能性が高い。
つまり「新顧客」のために「旧顧客」が切り捨てられる状況を招きかねないのだ。
それでも、新顧客の利用が恒常的に続くのであれば、「サービスの転換」としては一般の企業でもよく見られる事であり問題はない。
だが「新顧客」は「一時的避難」という状況下での利用に過ぎない。現状の問題が解消されれば、避難民は「元の生活」に戻り利用数は減少するだろう。
新顧客は「避難民だから」という理由での利用であり、あくまで特殊な条件下による一時的な利用に過ぎないからだ。
また、彼等が「一般の状況」に戻った後でも「これらのサービスを利用する」のかといえば、それはまずありえない。
「避難民であるから」利用していた以上、「避難民でなければ」利用する理由がないからだ。
では、彼等避難民が「通常の客として」利用するだろうか。
これもあまり望めないと考えた方がいい。
なぜなら彼等にとってこの旅館は、今まで「通常」利用をしていなかった旅館である以上「通常に復帰」した状態で利用するかといえば、明らかに難しいと考えるのが正しいからだ。
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結局、この旅館が「臨時」の突発的な需要に対応し「サービス」そのものを変えてしまった場合、「臨時」が去った後は「変えてしまったサービス」だけが残る事になり、それまでの「事業戦略」そのものが崩壊していた恐れがあったのだ。
今回、この旅館では「事業戦略」そのものを維持し続けた。
これが生き延びた最大の要因と言っていいだろう。
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とはいえ、立てた「事業戦略」に固執し続けるのが良いとは、私は言わない。
今回のような状況においては「事業戦略」そのものを大幅に見直した方がいい場合もあるからだ。
ただ「目先の利」に囚われて「戦術面での変更」で短期的な維持を図る事だけはしてはならない。
「戦略あっての戦術」であり、戦術から戦略が考えられる事はありえないし「局地的な勝利」の積み重ねで「戦略」での勝利を得ることは不可能だからだ。
何よりも「戦略的思考」これが最初に必要であり、すべてはこの「戦略」から考えるべきだろう。
実際、日経BPの記事にも、社長本人は意図してないのだろうが、それを思わせる内容が簡単にだが書かれている。
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>平田 地震でガラッと地面が揺さぶられました。しかし、後になって、お客様との関係も同時に揺さぶられたことに気づきました。集客をどこか別のところに丸投げしていたような旅館は、お客様と自分たちの間にあった旅行代理店も一緒に動いてどこかに行ってしまいましたので、お客様も一緒にどこかに消えてしまいました。そのような会社はなかなかお客様が戻ってきません。
(本文抜粋)
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私自身は、集客を旅行代理店に任せる事を「悪」だとは言わない。手法としてはありだと思う。
ただ問題は、旅館としての「顧客維持」をどのように「事業戦略」として考えていたのかだ。
「代理店が毎回連れて来る」ので大丈夫だというのであれば「代理店が連れて来なくなった場合」どのように対応するつもりだったのだろうか。
自分の旅館には永久に「代理店が客を連れて来る」と考えていたのだとすれば、明らかにそのような旅館は「戦略的」思考に問題があったと言えるだろう。
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まあ、最後の段落は「みんなで頑張ろう」的なもので書かれているので、本当にこの社長が「戦略的」に理解しているのかどうかは疑問だが、今回の件で言えば、「局地的な状況」に併せて安易に戦略変更をしなかった。
それが生き残った秘訣だと言えるだろう。
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### 当事務所(というより『私』)では、短期的な収入その他「目先の数字」での判断だけでなく、長期的視点に立った「その企業の存在意義」などを含めた「戦略的思考」により経営サポートを行なっています。 ###
震災に負けない人々(11)平田裕一・向瀧社長
内藤 耕 2011年7月26日(火)
日経ビジネスオンライン
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20110711/221413/
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この記事は、あまり参考にならないだろう。
なぜなら、この旅館の利用者数が一旦激減した原因は、旅館や周囲の観光資源そのものにあるのではなく、旅館と顧客を結ぶ「流通」のラインが地震により不安定になり「通常の『顧客の移動』」が確保できなかったからという「外的要因」が主なものだからだ。
そのため、外的要因が改善されれば、顧客・旅館周辺、双方に問題が無い以上、回復方向に向かうのは当然だ。
(とはいえ、震災による顧客サイドの状況変化や中間地点の東北地方全体で未だ不安定な部分があるため、完全に回復する事は現段階ではのぞめないだろうが。)
ただ、この記事で注目する点があるとすれば、それは目先の「顧客数(収入)」を確保するために、「流通」の変動という外的要因に対し「旅館のサービス」という本質そのものを変えて対応しなかった事だろう。
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確かに「避難民向けサービス」を提供すれば、当時の状況から考えると一旦は「顧客数」や「収入」を維持できるかもしれない。だが、そのためには「サービス内容」を変える必要がある。
その場合、中間の「流通」ラインが回復した後を考えれば、困ったことになっていただろう。
なぜなら、回復後に、この旅館では「今までの顧客」にも「今までと異なる新サービス」を提供することになるからだ。
この「新サービス」は、避難民向けに提供してしまった以上、避難民の利用が完全に無くなる提供する必要がある。提供途中でサービスを変更するという事は許されないものと考えるべきだ。
この場合、今までの顧客の嗜好と新サービスが合えば問題ないのだが、もし合わなかった場合、顧客はその旅館から離れていく事になる可能性が高い。
つまり「新顧客」のために「旧顧客」が切り捨てられる状況を招きかねないのだ。
それでも、新顧客の利用が恒常的に続くのであれば、「サービスの転換」としては一般の企業でもよく見られる事であり問題はない。
だが「新顧客」は「一時的避難」という状況下での利用に過ぎない。現状の問題が解消されれば、避難民は「元の生活」に戻り利用数は減少するだろう。
新顧客は「避難民だから」という理由での利用であり、あくまで特殊な条件下による一時的な利用に過ぎないからだ。
また、彼等が「一般の状況」に戻った後でも「これらのサービスを利用する」のかといえば、それはまずありえない。
「避難民であるから」利用していた以上、「避難民でなければ」利用する理由がないからだ。
では、彼等避難民が「通常の客として」利用するだろうか。
これもあまり望めないと考えた方がいい。
なぜなら彼等にとってこの旅館は、今まで「通常」利用をしていなかった旅館である以上「通常に復帰」した状態で利用するかといえば、明らかに難しいと考えるのが正しいからだ。
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結局、この旅館が「臨時」の突発的な需要に対応し「サービス」そのものを変えてしまった場合、「臨時」が去った後は「変えてしまったサービス」だけが残る事になり、それまでの「事業戦略」そのものが崩壊していた恐れがあったのだ。
今回、この旅館では「事業戦略」そのものを維持し続けた。
これが生き延びた最大の要因と言っていいだろう。
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とはいえ、立てた「事業戦略」に固執し続けるのが良いとは、私は言わない。
今回のような状況においては「事業戦略」そのものを大幅に見直した方がいい場合もあるからだ。
ただ「目先の利」に囚われて「戦術面での変更」で短期的な維持を図る事だけはしてはならない。
「戦略あっての戦術」であり、戦術から戦略が考えられる事はありえないし「局地的な勝利」の積み重ねで「戦略」での勝利を得ることは不可能だからだ。
何よりも「戦略的思考」これが最初に必要であり、すべてはこの「戦略」から考えるべきだろう。
実際、日経BPの記事にも、社長本人は意図してないのだろうが、それを思わせる内容が簡単にだが書かれている。
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>平田 地震でガラッと地面が揺さぶられました。しかし、後になって、お客様との関係も同時に揺さぶられたことに気づきました。集客をどこか別のところに丸投げしていたような旅館は、お客様と自分たちの間にあった旅行代理店も一緒に動いてどこかに行ってしまいましたので、お客様も一緒にどこかに消えてしまいました。そのような会社はなかなかお客様が戻ってきません。
(本文抜粋)
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私自身は、集客を旅行代理店に任せる事を「悪」だとは言わない。手法としてはありだと思う。
ただ問題は、旅館としての「顧客維持」をどのように「事業戦略」として考えていたのかだ。
「代理店が毎回連れて来る」ので大丈夫だというのであれば「代理店が連れて来なくなった場合」どのように対応するつもりだったのだろうか。
自分の旅館には永久に「代理店が客を連れて来る」と考えていたのだとすれば、明らかにそのような旅館は「戦略的」思考に問題があったと言えるだろう。
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まあ、最後の段落は「みんなで頑張ろう」的なもので書かれているので、本当にこの社長が「戦略的」に理解しているのかどうかは疑問だが、今回の件で言えば、「局地的な状況」に併せて安易に戦略変更をしなかった。
それが生き残った秘訣だと言えるだろう。
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### 当事務所(というより『私』)では、短期的な収入その他「目先の数字」での判断だけでなく、長期的視点に立った「その企業の存在意義」などを含めた「戦略的思考」により経営サポートを行なっています。 ###
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