「適材適所」こそが基本 ― 2011年10月25日 03時35分05秒
あなたの周りの残念なミドル
事実しか見えない「こうなってますおじさん」
小林 暢子 2011年10月24日(月)
日経ビジネスオンライン
本来「事実を見る事」しかできない人というのは、確かに世の中に存在する。
そして運悪くこの手のタイプが中間管理職になる場合もある。
だがこの時、「こうなってます」おじさんを責めるのは問題があるだろう。
そもそも、このタイプの人間の能力はどこにあるのだろうか。この人はまったく能力が無いわけではない。「こうなってます」と正確に伝える事はできるのだがら『状況から事実を正確に把握し伝達』する能力すなわち情報収集・分析能力は非常に高いともいえる。
では、この人に不足しているのは何か。
それは、情報から自分が生み出さなくてはいけない「洞察力」「発想力」の部分だ。
この事は記事自体でも書かれている。
この人は確かに中間管理職としては失格だろう。自分でもそう考える。なぜか。
それは、そもそも「管理職」に求められる能力の一つが「洞察力・発想力」すなわち自分で考えを生み出す「創造力」だからだ。
その「創造力」の無い人材が「創造力」を必須とする「管理職」にいる。
これは例えていえば、長距離打力が必要な4番バッターに守備力が高いだけの選手を置くようなものだ。
このようなミスマッチ状態ではうまくいくはずがない。
ではこの時、組織としてはどうやって対応したらよいだろうか。
個人としては「頑張って創造力をつけましょう」という話で済むだろう。
だが、組織として見れば話は違う。
人は人に「創造力」を「教える」事はできない。
それは記事でも書かれている。
それがね、僕にも分からないのよ。前職の時もいろいろ議論したんだけどねえ。分析は教育できるんですよ。アナリストなら株式相場の読み方を体系的に学ぶとか。でも洞察力には学習材料が無い。洞察力の無い人の課題は分かるんだけど、それをどう上げるかという方法論はなかなか、ねえ。
創造力を「鍛える」事はできる。だが「教わる」事はできない。
コレコレこうすれば創造力が付くという定型的な方法というのは存在しない。何度も自ら発想し洞察し続けた結果「自分なりの創造力」が自己内部に構築されていくのだ。
実際、ドラッカーも著書において次のように述べている。
本書は教科書ではない、その理由の一つは、成果をあげることは学ぶことはできるが教わることはできないからである。つまるところ成果をあげることは教科ではなく修練である。
ドラッカー名著集 1「経営者の条件」 P.218 ダイヤモンド社
「創造力が付く」ように教育する事は不可能だ。
では「創造力が無い」人間はどのように扱ったらよいのだろうか。
答えは簡単。
守備力が高く打力の無い選手であれば、4番バッターから外せばいい。
「創造力が無い」人間ならば、「創造力が必要な部門」から外せばいい。
それだけでいい。
ただこの時注意しなければいけないことがある。それは、これを降格人事としてはいけないということだ。あくまで不適切な「中間管理職」から外して最も活かせる部門に置くための人事、即ち「適材適所を貫く」ための人事異動として徹底することだ。
そもそも問題なのは、この人の「個人的資質」ではなく「適材適所という基本概念から外れた人事」を行った「人事管理」の方にある。
人事がうまくいかなかったときには、動かされた者を無能と決めつけてはならない。人事を行ったものが間違ったにすぎない。マネジメントに優れた組織では、人事の失敗は異動させられた者の責任ではないことが理解されている。
重要な仕事をこなせない者をそのままにしておいてはならない。動かしてやることが組織と本人に対する責任である。仕事ができないことは本人のせいではない。だが動かしてやらなければならない。
ドラッカー著「経営者の条件」 P.8
人事面でのミスマッチという失敗が、ミスマッチされた本人の責任になる。そのような組織では個人が安心して働くことなど不可能だ。なぜなら他人のミスで自分が裁かれてしまうという事なのだから。
ところが、未だに多くの企業がミスマッチの責任を本人に負わせ、負わされた本人にミスマッチを解消する努力を要求する。
これでうまくいくはずがない。
あくまで「適材適所」に徹する、これこそが基本原則にして最も有効な解決方法でしかないのだから。
ところが、この記事を書いている筆者自身は「だから能力を付けましょう」論に陥ってしまっている。
業界を問わずに存在する「残念なミドル」とは。いくつかのタイプを取り上げ、その脱却法を紹介する。
それが、この記事自身を「残念な記事」にしている原因なのだろう。
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